人が一生の内に聴けるアルバムは3万6千500枚
2016/10/31 7号
人が一生の内に聴けるアルバムの最大数は!?
人が一生の内に果たして何枚アルバムを聴くことができるのか。非常に興味深い質問ですが、良く考えると少し物悲しい気分になる質問です。
仮に一日一枚聴くとしましょう。単純計算では一年で365枚、十年で3,650枚、百年で3万6千500枚です。
昨今、生命科学は急速に進歩を遂げていますから、あと少しで平均寿命は100歳くらいまで上がるだろうと思われます。赤ちゃんのときから、お母さんが、「おお、よちよち。良い子に育ってね」とローリングストーンズとかレディオヘッドとかを毎日日替わりで聞かせ始めれば、3万6千500枚は夢ではない数なのです。
なかなか一日一枚は聴けない現実
しかし、自分の生活を振り返ってみると、一日一枚アルバムを聴くのはなかなか難しいところがあります。
普通に通勤をされている方だとすると、電車の中でもしかして往復1時間時間が取れる方もいるかもしれませんが、電車の音でうるさくて細部が聞こえませんし、そうなると仕事が終わって家に帰ってそれからじっくり聴くことになりますが、仕事の準備やテレビも見なければいけませんし、お子さんがいればお子さんの宿題を見てあげたりして、とても一日一枚は聴けないのです。
デザイナーとかプログラマーとか、たまに一日中音楽を聴いていても怒られない職業もありますが、そういう方はまれなほうで、職業音楽人でない限り、一日一枚を聴くのは難しいのです。
多聴と傾聴
枚数を多く聞くことは、多聴です。一枚を深く丁寧に聴くことは傾聴です。多聴と傾聴と音楽を楽しむのにどちらが必要なのでしょうか。
ローリング・ストーン誌などは、じっくり聴く傾聴派のためにわざわざ500 Greatest Albums of All Time(ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイムベストアルバム500 ) というリストを発表しています。ロックとポップスが中心でカントリーとジャズ、ブルースがちらっと入っているリストです。確かにすごい名盤がずらっと並んでいます。これらをじっくり聴くだけでもこれから聴き始めるとなると二年以上かかるでしょう。
あるいは有名な曲だけを聴くという手もあります。だいたいとても正直に言うと、一つのアルバムの中で印象に残る曲は2曲くらいしかありません。これはミュージシャンも忙しいわけですから、全ての曲に全精力を注ぎ込んでアルバムを作ることはなかなかできず、手を抜いているからなのです。
だからそういう目立つ、良い曲だけを選んで聞けばよいという考えもあります。ただしピンクフロイドのようなプログレッシブロックや、ジャズもそうですが、アルバムがトータルで表現したいことを伝えているケースも多くあります。そういう場合はアルバム全部を聴かないといけないわけです。
好きなところから枝葉を広げて深く聴いてみましょう
そういうジレンマはありますが、とりあえず、シングルとして、あるいはアルバム中の良い曲をじっくり聴いて、そこを手がかりに、だんだんと関連性のあるものに手を広げるという聞き方は、限られた人生の時間の中で取りうる合理的でかつ夢を与えてくれる聴き方でしょう。
ジャズなら例えばあるミュージシャンがリーダーアルバムをやっていた。その後ろにサイドメンがいる。あ、そのうちの一人がリーダーをやっている別のアルバムがあった、とか。
あるいはスタンダードとも呼ばれる有名な曲を異なるミュージシャンが演奏しているのを聴き比べてみるとか。
ロックの場合、歴史が長いバンドなら、メンバーが入れ替わってますから、出て行ったメンバーを追いかけてみるとか。
そうした関連性を意識しながら聞いていくと、短い時間でも何か豊かなレガシーを手に入れたような気分になります。
ミュージック・ソムリエ・ドットコムの気分や感情で検索する方法はそうした関連性を新たな視点で提供しています。
同じ感情を生み出す曲、同じ状況に適した曲。そうしたつながりをぜひ皆様に見つけていってもらいたいと思います。