ハノーヴァー・マヌーヴァー
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不安定な声のシンガーは結構いる

2016/12/06 43号

悪魔と天使の声が入れ替わるマドンナ

先週金曜日すばらしいシンガーにインタビューをしてきました。もうすぐその記事をアップしますが、今日は昨日の続きで、シンガーの歌っている声と話す声は違っているという話です。

前回はマドンナの低音部はまるで悪魔のようなゲロを吐いているような声で、世界を席巻したキュートな歌声のLike a Virginでしたが、そのアルバムには非常に声が不安定な曲が何曲も収録されています。

二曲目のAngelという曲は有名で、「アハハハ」と笑っているところなど、マドンナ=聖母どころか、どう聞いても悪魔の笑い声にしか聞こえないのです。

私は初めて聞いたとき、さすが、善も悪も極めないとマドンナにはなれないんだな、などと思ったのですが、途中のOver and Overとか、最後のStayとか、声が天使と悪魔でクルクル入れ替わるので、マドンナとは二人いるのか?それとも多重人格者なのだろうか?などと疑いました。


未完成だったため天使と悪魔が同居することになった

結局ボイトレが未完成で、作曲陣もこれがマドンナの実質的な世界に向けたデビューアルバム(実は二枚目)ということで、どの高さが合うのか分からないまま曲を提供したのでしょう、こうしてアシュラ男爵(古すぎますね)のような曲が多数残されることになったのです。

ゲロっぽい声を出すスティーヴィー・ワンダー

声が未完成で有名になった一人にスティーヴィー・ワンダーがいます。彼といえば、あのどこまでも伸びるちょっとざらざらした高い歌声を思い出すかもしれません。が、彼の代表作、Talking Book に入っている、You are the Sunshine of my Lifeを聞いてみましょう。

彼もマイケルジャクソン同様、子どものときから歌っていたので、おそらく子どものような声で歌いたいという気持ちであののびのびとした高音の歌声を作ったのですが、下のほうが未完成でした。一番の後半"And if I thought our love was ending"というところや同じところの二番、"And I know that this must be heaven"という下がっていくところですが、私は、なぜこの人はこんなゲロをここで吐くんだろう?何を表現したいんだろうと真剣に悩んでしまいました。


なぜそこでゲロを吐く?

大人になったマイケルジャクソンも高い声を出すのにだいぶ苦労したようなのですが、この時代ポップス向けのボイトレのメソッド自体がまだ完成されていなかったのかもしれません。ただスウィーヴィーはこのゲロ声を後に克服したようでライブなどで観ると、もっと軽く歌うことで同じ声質で歌えるようになったようです。

実は作った声で低音を出すのは難しい

実は先週インタビューさせていただいた素晴らしいシンガーの方も強調していたのですが(もったいぶらないで名前を教えて!もうちょっとお待ちを)、高い声は作れるけど、そこから低いところを安定して(同じ声質で)出せるようになるのが難しい、ただ地声で出せばいいってもんじゃない、んだそうです。

それをマドンナやスティーヴィーはおそらく地声のように歌っていたのでしょう、だんだん下がっていくと地声になってコントロールできなくてゲロ声になっていたのでしょう。

もっともそのインタビューをさせていただいた方によれば低い声を作るのは年数がいるんだそうで、その意味でもデビューしたばかりのマドンナなどには無理だったのかなと思いますし、ある意味ロックシンガーがずっと高い声で歌っていて、あえてメロディーの低いほうに行かないのも、そのほうが作った声だと歌いやすいからなのだろうと考えられます。

ボイトレ的に言うと低いほうに下がっていくときに転換点があるから、それを避けてずっと高いところで歌っている・・・それが60年代-80年代の高い声のロックの正体だったのです(ロブ・ハルフォードやイアンギラン、ロバートプラントのような上から下まで全部滑らかに出る天才は別として)。

外国人の声はなぜ高い・・・ボイトレが知られていなかったときにはミステリアスでしたが、今となっては幽霊の正体見たり、枯れ尾花でした。