ハノーヴァー・マヌーヴァー
☆☆お知らせ☆☆ 記事をお読みくださりありがとうございます。サーバー移転しました。これからの新記事はWordPressを使って書いていく予定です。ご利用の皆様に不便がないよう、スムーズにリンクや案内をつなげていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。週二回程度更新していく予定です。-

プログレの森の周囲を散策する

2016/12/11 48号

サイケデリックだった時代

前回プログレの深い森の中をさまよっていただきましたので、今日は森からちょっと出てその周囲を散策してもらいたいと思います。

プログレもその名称ができるまでは、アートロックとかサイケデリックロックと呼ばれていたわけで、ピンクフロイドの初期のアルバムなどまさにその通り呼ばれていたのです。

アートロック、サイケデリックロックというとイギリスのクリームやアメリカのドアーズやジェファーソンエアプレインなども入ってしまって、ピンクフロイドや後のキングクリムゾンの音楽を描写するにはちょっと違うかなというわけです。とはいえ、キングクリムゾンもピンクフロイドもブルースを基調にやっている曲もありますので、大本は一緒で悪くはなかったのでしょう。

ビートルズのサージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドとかマジカル・ミステリーツアーなんていうのもこのサイケとアートとがぐるぐると渦を巻く曲が多く、ライバルのローリングストーンズもサタニック・マジェスティーズなどは同じ路線です。


おもいっきりサイケに

奴らに負けないように作った

このサイケでアートな路線は、ブルースの枠組みを借りてイギリス人独特のじゃっかん陰鬱なメロディーと、当時流行っていたインド音楽風の妖しげな雰囲気をかぶせれば結構簡単にできました。当時のイギリス人ミュージシャン共通の作りやすい路線だったのでしょう。

アメリカ人の方はもともとの黒っぽいブルースを弾くのは自然にできるので、そこにイギリスっぽい陰鬱さを借りてきてかぶせて作ったのでしょう。時代は新しくなりますが、プリンスのアラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイはマジカルミステリーツアーにインスパイアされていて(※プリンス本人はこのアルバムに対するビートルズの影響を否定していますが)、ジャケットも60年代当時の雰囲気をオマージュしています。


誰がどう見てもそっくりだが

イギリス人が作ると自然にプログレっぽくなってしまう

サイケデリックからインド的な雰囲気を無くし、過度の実験要素を減らしてより生の演奏に力を入れるとプログレらしい作品になりましたが、プログレを意識していなくてもどうもこのブルースプラスイギリス的陰鬱さというのはいろんなイギリス人ミュージシャンに現れるようです。

その中でもこれはプログレなのではないかと思える音を作ったのはデヴィッド・ボウイです。ジギー・スターダストなどはその火星から来たミュージシャンというコンセプトといい、演奏といい、ピンクフロイドの狂気を彷彿とさせます。


火星から人気アーティストが来たという設定

クイーンもその大胆な曲の構想と大作志向からプログレっぽいと言っていいでしょう。。


ボヘミアン・ラプソディのプログレ度は120%

プログレ・ミュージシャンを上手に利用したのは、ロキシー・ミュージックあるいはそのリードシンガーのブライアンフェリーです。ロキシーミュージックはキングクリムゾンのレコードを出していたEGレーベルから販売され、プログレ風の雰囲気のダンスミュージックをつくり独特のポジションを獲得すると同時にここの卒業生(!)たちがイギリス音楽界で活躍するスクール的存在になりました。


このどちらかは男性だという

ロキシーに出入りして一番成功を収めたのはブライアン・イーノです。キングクリムゾンのリーダー、ロバートフリップとのアルバムも有名ですが、彼のポップでかわいい楽曲が並ぶソロもなかなか魅力的です。


あの怖い顔でこんなかわいい曲を?

日本とも縁が深い

このプロデュースで有名かも

もう一人、プログレにインスパイアされていたので有名なのはケイトブッシュです。一枚でも聴いていただければ分かりますが、彼女の音楽は気持ち悪いです。サイケの一番気持ち悪いところとオペラを足して二で割ったような不気味な曲を次々と発表しました。何でも極度の恥ずかしがり家だというところからステージ上で奇妙なパントマイムをしながら歌うその姿も、今米英を騒がせている怖いピエロ(笑)みたいで、ぞくぞくするものがあります。


ちょっと吐きそう

ほかにも、アランパーソンズプロジェクトや、映画「エクソシスト」のテーマともなったチューブラーベルズを作成したマイクオールドフィールド、メロディーラインがサイケデリックロックな初期のポリス、ローリング・ストーンズに誘われたけれど入らなかった大作志向のギタリストロイ・ブキャナンなどなど、イギリス人ミュージシャンにとってはプログレは滋養を運んでくる母のような存在だったのです。

根が明るいアメリカではいま一つ陰鬱さが足りなかった

アメリカでも大作志向でクラシックに負けない生の演奏で勝負しようというグループが現れましたが、どうしても根が明るいからか、ハードロック寄りになってしまいました。

その中でも一番成功したのはカンサスです。「Carry On Wayward Son(伝承)」というキャッチーで聞いていて気持ちがいい曲があります。変拍子を多用して実にプログレらしいアレンジですが、やっぱりどこか明るいさわやかさがあります。


明るい未来を目指す感じ

もう一方の雄はもともとサイケデリックなことをやっていたジェファーソン・エアプレインですが、いろいろ紆余曲折を経て、バンド名がジェファーソン・スターシップに変わり、スターシップになったりしましたが、1985年にはセーラという当時流行っていた、バックはハードで歌は泣けるポップなものという作りで見事全米NO1を取りました。


アメリカではどうしてもポップでキャッチーになる

ミュージシャンズ・ミュージシャンとして名を馳せたのはフランクザッパですが、なかなか一般ウケはしませんでした。


これが一番正統プログレらしさがある

プログレは歴史が長く、またジャズのように人脈の交流、交換も頻繁に起きました。最近のキングクリムゾンのCDを買うと必ず中に人脈図が入っていて、誰がどこのバンドに所属していたかが、わかるようになっていて、それをたどるのもファンのひそかな楽しみです。ぜひプログレの森の周辺も散策してみてください。