ハノーヴァー・マヌーヴァー
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ベース・プレイヤー列伝その2-ジャズのプロデューサー的な人たち

2016/12/15 52号

ベースプレイヤーはリズムもメロディーもハーモニーも考える

前回ジャズのベース・プレイヤーの進化とそれぞれが改革していた分野を紹介しました。ポールチェンバースは鉄壁の守りの刻み、スコットラファロはハーモニー、という具合です。

今日はロックのベース・プレイヤーをやろうかなと思ったのですが、ジャズの分野でどうしても取り上げたほうが良いベース・ジャイアンツがいますので、二回の予定のところを三回に分けて書くことにしました。

ジャズのベース・プレイヤーの中にはバンドリーダーの役割以上に明らかにアレンジャー、プロデューサー的な視野と音楽センスを持って仕事をしている人がいます。演奏家でありプロデューサーと言うと普通ピアノ・プレイヤーが思い浮かびますが、ベースにも傑出した人が多いようです。

チャールス・ミンガスとチャーリー・クリスチャン

まずはこの人を差し置いて他の人は紹介できないというくらいのチャールス・ミンガスです。彼には「直立猿人」という素晴らしい邦題がついている愛すべきアルバムがあります。

このアルバムは少ない数の楽器で空間を生かし、かつ映画音楽のようなスリリングな展開が続いていきます。ベースプレイもですが一体この先どうなるんだろうというアレンジが生きています。まさにこれまで四足歩行をしていた猿人がにょきっと急に立ち上がったような意外さがあります。

ベースはリズム楽器でもありハーモニーも出せメロディーも弾ける・・・そういう思考でいるとこういう曲が作れるのでしょうか。実は彼はピアノも弾く人でこのアルバムもファンの間では有名です。こうした訓練で視野が広がるのでしょうか。

もう一人ベーシストでありながら、アレンジャー、コンポーザーとして有名なのはチャーリー・ヘイデンです。すでにボンバードラミ氏の紹介[【特別インタビュー】ボンバードラミ 透明な美しい声に誘われて]でも新し目のアルバム「ノクターン」を紹介させていただきましたが、フリーな時代の彼が最初にリーダーとなったこのアルバムなどもなかなかすごいアレンジが冴えています。

当時のベトナム戦争に反対する内容のアルバムですが曲ごとに全く違うアレンジがほどこされまるでミュージカルでも見ているかのようです。フリージャズ仲間のカーラ・ブレイのアレンジとも言われていますが、スペイン内戦にヒントを得たというアルバムの着想から始まって、ヘイデンの意向が強く反映しているのではないでしょうか。

新しい時代のマーカス・ミラーとジョン・パティトゥッチ

新しい時代のアレンジャー・プロデューサーとして忘れてはいけないのは、マーカス・ミラーです。昨日紹介したスタンリー・クラークの動画でもセンターを務めていましたが、ベーシストとしてオールマイティーであるだけでなく、ヒップホップやファンクを色濃く混ぜたアレンジで80年代晩年にマイルス・デイヴィスがスタジオで吹き込んだ三枚のアルバム、Tutu、Music from Siesta、それにアマンドラの製作を支えました。

この三枚は賛否両論ありますが、都会的な黒っぽい刺激的なサウンドにうまくマイルスが得意とする音域での演奏をかぶせた好演としてまとまっています。


都会の夜の妖しいビルの下を車で流すような感じ

90年代から主に黒人でないミュージシャンによる「黒くないジャズ」がケニー・Gなどが有名になったことで商業的に成功を収めますが、その中で美しいアルバムを作り出す抜群のセンスを持っているのが、ジョン・パティトゥッチ(John Patitucchi)です。ベースプレイヤーとしても卓越した技術を持っていますが、それをお披露目するのが楽しいというような曲もありますが、曲の美しさを引き立たせるならベースは目立たなくても全然良いというアレンジもします。


冬の透明な澄み通る空気

このアルバム中のIn the Bleak Midwinterは、ハノーヴァー・マヌーヴァーの気持ち顕せくでは「冬に聴きたい」で出てきます。ぜひ他の冬に聴きたくなる曲も探してみてください。

次回はベースプレイヤー列伝その3ということでロックのほうを書いていきます。