ナット・キング・コールのクリスマス・アルバム-威厳と優しさにあふれたクリスマスをお探しなら
2016/12/20 56号
アイビーリーグのカーディガン
ビング・クロスビーのクリスマスアルバムと同じくらいああ、クリスマスが来たな、と実感できるのがナット・キング・コールのクリスマスアルバムです。
ナット・キング・コールにはご存知のようにナタリー・コールという娘がいますが、このアルバムが出た1960年彼女は10歳でした。
ちなみにこのアルバムは、"The Magic Of Christmas"というタイトルで1960年に一度出て、1963年に再発されたときに今のように"The Christmas Song (album)"と改題され、元々は白人の子ども二人がクリスマスツリーの前に立っているジャケットが、今のようなナット自身が暖炉の前にカーディガンを着て座っているものに変えられたのでした。
威厳のある声で何かを伝えたかったナット・キング・コール
さてこのアルバムのナットキングコールは少しいつもと違います。声が違うのです。何か普段の彼には無い威厳と厳しさが感じられます。
声もそうですが、彼の着ているアイビーリーグのカーディガンも気になります。ナット・キング・コールの父親は牧師さんだったので厳格な家に育ったのでしょう。おそらくしつけも厳しかったのではないでしょうか。ナットは高校を出るとすぐ演奏のためクラブを回り始めますが、このアルバムからは(カーディガンからは)厳格な父親像が見え隠れします。
もちろんもっと普段の彼を知っているファンならば優しい歌声も知っているわけで、彼がこのアルバムを通じて娘達に伝えたかったことはきっと厳しさだけではないという思いにいたるでしょう。
厳しさと優しさ。その両方がにじみ出ている父親に育てられ、娘のナタリーはマサチューセッツ大学や南カリフォルニア大学など裕福な子弟の集まる大学を卒業してプロ歌手になりましたが、不幸なことに若い頃ドラッグの注射針を使い回しして肝炎になりそれが元で2015年に亡くなりました。天国のお父さんにきびしく怒られたかもしれません。実はナットはナタリーがまだ15歳のとき、このアルバムを録音して五年後に亡くなっていたのです。
日本人になじみのないクリスマスが多く収録されているこのアルバム、厳しさと優しさにあふれた父親の声を堪能してみてください。