ハノーヴァー・マヌーヴァー
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ジャズ・フォー・ジャパンとソングス・フォー・ジャパン 実は大きな違いがあった 73号

2016/1/11 73号

東日本大震災後に現れた二つのチャリティーアルバムだが

東日本大震災の後、日本のためにということで多くの人が自分達にできる形で何かをしようと動きました。その中でミュージシャンはやはり音楽を作り販売することが仕事ですから、アルバムの収益から寄付をしようという発想は自然なことで、被災して原発事故の規模も正確に把握できなかった当時の日本にとっては大変ありがたいことです。

特に日本は商業音楽の販売売り上げが世界で二位というだけでなく、日本のファンは本当にミュージシャン達の音楽を愛することで有名で、単に金銭的にアーティストを支えるのではなく、精神的にも一緒に成長するという気持ちが外国人ミュージシャンにも伝わったのでしょう。日本のために何とかしたいという外国ミュージシャンが出した二枚のチャリティーアルバムがあります。

一つ目は「ジャズ・フォー・ジャパン」です。これは本当に震災の直後に、日本と関係の深いジャズミュージシャンがロスアンジェルスのスタジオに集まって、有名なジャズ曲を彼らのそれぞれの思いと願いを込めて作ったアルバムです。

スティーヴ・ガッドが呼びかけて全体を主導したようですが、集まったミュージシャンはケニー・Gやジョージ・デューク、リー・リトナー、マーカス・ミラーのような大物、クリスチャン・マクブライドのようなばりばりの中堅なども集まり、日本では急遽松居慶子が飛んでセッションに参加しました。

曲名をみると「処女航海」とか「この素晴らしき世界」とか良く知っているものですが、どの演奏もミュージシャンのそのときの息吹が感じられ、全然無理に練っていないミュージシャンの心そのままのような演奏で、「この素晴らしき世界」を聴いていると助け合い、支え合いで日本が団結したあの頃を思い出して涙があふれてきます。

もう一つはソングス・フォー・ジャパンです。こちらは東日本大震災直後のコンサートをキャンセルしなかったことで日本をサポートしてくれたレディ・ガガ様ら大物のポップ・ロックの名曲が収められています。

しかし、ソングスのほうはいろいろ気になります。選曲を見るとジョンレノンの反戦歌「イマジン」がなぜか最初に来ます。他の選曲を見てもうーん、なんかうーん、ちょっとはかすっているかな、日本の状況とあまり関係無さそうだな、という感じです。何よりただ古い曲で売れそうなものをそのまままとめただけです。

誰が掛け声をかけたのかとか、どういう経緯でこのミュージシャンのこの曲が収録されたのか、全く見えないのも問題です。大手レコード会社が集まって版権の縛り無く作ったそうです。寄付をいただいておいてこう言うのもなんですが、人間の姿が見えないのにアルバムが出されて(本人の意向がどれくらい入っているのでしょうか・・・)、こんなアルバムが出されてもしかすると当惑している収録ミュージシャンもいるかもしれません。

ここでもやっぱり、Think Globally, Act Locallyの原則が必要だったのではないでしょうか。レコード会社が何かしたいというのはありがたいことですが、そこに人間が存在していないと、はあ?なんでこんなのが出たの?と思われるだけです。ちなみにソングスはチャートの成績が良く、ビルボード200では5位になったようです。ジャズのほうは、うーん、どれくらい売れたのかな。という感じなのは皮肉です。

外国人ミュージシャンの皆さん、どんな形でも人間が見える姿で手作りで社会活動をされますよう、お願いいたします。