ジャズピアニスト列伝その2 ビル・エヴァンス 182号
2017/05/08
ビル・エヴァンス-スキマを作り出し他のメンバーに埋めさせる天才
マ:ワタクシが紹介するとなにか合ってない気もしますが、支配人の第一回目を受けてワタクシはビル・エヴァンスを紹介したいですな。
支配人:へー、それは意外だ。でもどうして。
マヌーヴァ:支配人が一回目で紹介したバド・パウエルの究極の反対側にいる人だと思うからですな。
支:うんー、なるほど?
マ:というのも支配人はバド・パウエルは一人の演奏でジャズを全て体現してしまっている人と紹介しましたが、ビル・エヴァンスはその反対で、スキマを一杯作って、それをベースやドラムに埋めさせる天才ですな。
支:なるほど、それが俗にいうインタープレイという奴かな。
マ:そうですな、スキマがあるから特にベースが自由にいろいろな音を出してカラフルな音に仕上げられるわけですな。それには初期スコット・ラファロとか中期のエディ・ゴメスといった優秀な、スキマを埋めることに価値を見出すベーシストが必要だったわけですな。たぶんビル・エヴァンスのピアノだけを抽出するとあまりジャズっぽくは聴こえないでしょうな。
支:なるほど、確かにバドパウエルは左手でベースラインもがっつんがっつん弾いているけど、エヴァンスは右手だけで弾いているみたいな軽やかさしかないよね。
マ:そうなんですな、低いところとか刻むところはベースとドラムに譲ったんですな。たぶん、カインド・オブ・ブルーでエヴァンスがマイルスに呼ばれたのはそういうスキマ・クリエイターだったからではないでしょうかな。あのアルバムもスカスカなリズムが面白い曲が多いもんで。
支:スキマ・クリエイターって面白いね。確かにバド・パウエルに限らずオスカー・ピーターソンもはっきり言ってドラムもベースも要らないよ、みたいにモリモリ弾くもんね。ピアノはそういうことができる楽器だから余計全部弾いちゃうんだろうけど。
マ:そうなんですな、このスッカスカ感はあえて言えばセロニアス・モンクくらいしかあとできる人はいないわけで。しかもあっちはぎこちなくやることでスキマを作りますが、エヴァンスは軽やかに跳ねるように転がるようにやるわけですな。
支:なあるほどね。じゃあ、一番のお薦めは。
マ:エヴァンスの場合キャリアが長いので、一枚決めるより、エヴァンスが得意とする曲調の中から好きなものを決めて、別のアルバムでも探して楽しむのが良いですな。ワルツ・フォー・デヴィのかわいいノリが好きなら、ポートレイト・イン・ジャズに入っているPeri's Scopeでしょうし、同じアルバムの陰鬱なSpring is hereが好きなら、ずっと後のYou must believe in Springとか。
聴き込みたければここからスタートか
支:なるほど、それは面白い聞き方だね。ファンなら本当に一日中浸っていられる聴き方だね。