90年代の名盤20枚特集 その2 OKコンピューター 195号
2017/05/22
イギリスの陰鬱で内省的な懊悩を昇華させた傑作
マヌーヴァ:昨日はイギリスとアメリカが90年代に分かれたおかげでよいこともあったということを話しましたが、今日紹介するのはまさにイギリスを体現する傑作ですな。
支配人:へー、ということはあれかな、それともあれかな。90年代のイギリスはとても良いアルバムが多かったよね。
マ:1997年のこれですな。
支:ああ、レディオヘッドのOKコンピューター。今回の特集では順位は付けてないけど、もしつけるなら90年代のアルバムのベスト3に入るよね。好みが合えば一位かも。
マ:そうまさに好みの部分ですな。これだけ陰鬱で内省的でもがき苦しんでいるような曲というのはなかなかほかでは聴けないですな。
支:そうだよね。でもメロディーはキャッチーですぐ憶えられるところも面白いよね。後ろのブライアンイーノのようなアンビバレントというかミニマルミュージックというか、そういう音が苦悩を悶々と映し出しているけど。
マ:このアルバムは評論家はピンクフロイドの「狂気」と比べたがったようですが、やっぱり素性としてはブライアンイーノとか、レディオヘッドのバンド名の元になったトーキングヘッズとかなんでしょうな。
支:このアルバムはセント・キャサリンズ・コートという15世紀の石造りの邸宅で録音されたけど、メンバーは録音の合間に刺激を受けるために、エンニオ・モリコーネという映画音楽で有名な作曲家を聴いていたみたいだね。ほかにビートルズとかマイルスデイヴィスも聴いていたようなんだけど。
マ:そう言われると一人の若者の懊悩を描いた映画みたいなつくりですな。まあ、その辺がピンクフロイドと比較されることになった所以でしょうが。
支:いずれにしてもレディオヘッドの出世作で名盤中の名盤だけどレディオヘッドのすごいところはこの後も音を変えながらどんどん良いアルバムを出し続けたところだね。ところで、このアルバムで一番のお薦めは。
マ:やっぱり6曲目カーマ・ポリスでしょうな。なにか狂うとはどういうことか分かるような気がする曲ですな。もちろん聴きづらいわけではなく、静寂の中に狂気が渦巻いていて自分も段々引きずり込まれるような恐怖ですな。しかも歌声はさわやかでキャッチーなところが若者の不安定さを見事に出していますな。
支:二人ともべた褒めだけど本当にこれはお薦めだよね。暖かい時期よりは冬に聴くといっそう感性が冴え渡っていいね。
参考Wikipedia Radiohead
https://en.wikipedia.org/wiki/Radiohead