90年代の名盤20枚特集 その6 Paint the Sky with Stars(エンヤ) 199号
2017/05/26
ニューエイジという分野を築いた多重録音の天才
マヌーヴァ:アメリカの90年代はカフェでコーヒーを捗らせるためにお洒落にアコギを弾こうという流れだったわけですが、こういうとなんですが、アメリカのルーツ音楽はやっぱりカントリーとかフォークなわけで、生の演奏をしようとしたときのリソースが希薄だったわけですな。ジプシーキングスのような民族音楽の血が薄いというか何というか。
支配人:まあ、そうだね。それは仕方がないというか、アメリカで濃い民族音楽をやろうとしたらブラックミュージックになってしまうもんね。
マ:そのとおりですな、それでジャズがまたウイントンマルサリスらの努力で、生楽器で復興したのもその流れだったわけですな。
支:なるほどね。同じ電子音楽に飽きていた傾向は世界中にあったと思うけど、ほかの国もやっぱり民族音楽とか生楽器に目を向け始めたよね。
マ:その通りですな。それで民族音楽というとやっぱり私はこれをお勧めするわけですな。
支:おおー、エンヤのベスト盤だね。ベスト盤を聞くことの功罪はさておき(参考:ベスト盤を聴くことの功罪の罪のほう 139号 )、どうしてエンヤなの?
マ:アイルランド出身の彼女のケルト音楽のエッセンスやクラシックの素養、それから教会音楽の旋律や時々見せる軽やかな宮廷舞踏の感覚がまさにこの90年代にピッタリだったわけですな。
支:一応デビューは80年代で、すでに88年に"Orinoco Flow"とか出ているけど、やっぱり92年の"The Celts"とか97年の"Only If..."もすごい彼女のトレードマークだから、90年代の人と言っていいんだろうね。
マ:そうですな、それで面白いと思うのは、彼女の音楽を好んで聴く人たちが嫌いであろう80年代の電子楽器の技術の進歩がなければ、エンヤは出てこなかったというところですな。
支:ああ、彼女は二人パートナーがいるけど、基本コーラスなんかも全部自分で重ねて重ねて取ってるんだもんね。なんか144トラック取れるレコーディング機器に出会って初めて音楽性が固まったとかで。
マ:その通りですな。なので電子楽器が発展したからと言ってピコピコやるだけでなく、こうして生のような緊張感や臨場感のあるユニークな民族音楽を作ることもできるというのは面白いですな。
支:日本では喜太郎とか冨田勲とか70年代にいて、イギリスではチューブラーベルズのマイクオールドフィールドとかいたけど、感性を揺さぶる道具として電子楽器を使いこなしたということだね。
マ:その通りですな。そのおかげで何度聞いても飽きが来ない、もしかすると昔から歌い継がれてきた曲のような気がしてくるわけですな。
参考エンヤ ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/エンヤ