90年代の名盤20枚特集 その8 Vs パールジャム 202号
2017/05/29
雰囲気は最高だが曲作りが不完全で歌うところのない90年代を代表するパールジャム
支配人:前回の話の中で、90年代は「不完全」というのがいいキーワードということで出てたね。その90年代の不完全さを象徴するのがこのアルバムだね。
マヌーヴァ:ほほう、パールジャムのVsですか。確かに雰囲気だけはレッドツェッペリンの弟分というか、亜流のような感じで最高にイカシテマスが。
支配人:そうなんだね、でも雰囲気だけで、実質どの曲も曲になっていないんだね。ボーカルのフレーズ集みたい。
マ:確かに三曲目ドーターとか、泣かせようとしてバラードにしてみたけども、メロディーはありません、みたいな作りですな。楽曲に必要な、AB、あるいはABCパートという構成が無いですな。
支:そう、ただボーカルがロバートプラントに似ていてかっこいいように聞こえるというだけなんだよね。80年代だとオジーオズボーンもブラックサバスもジューダスプリーストですら、泣ける歌って聞かせる美しいメロディーを持っていたもんね。
マ:結局、80年代に対して何でも反抗しようとしてそうなったんでしょうなあ。しかも時代がそれを許したという。スマッシングパンプキンズとかアリスインチェインズとかも同じ系統ですなあ。雰囲気や音はいいけどメロディーがないので記憶に残らないという。
支:結局今、ブックオフとかいくとあの頃の不完全なグランジはみんな最安値で売っているし、心に残らないということはどうでも良いものということになるんだよね。
マ:不完全に続いて、「どうでもいい」というのは90年代のキーワードのような気がしますな。R&Bのほとんどもメロディーが無くなりましたし。一方でオアシスのようなメロディーのあるバンドは今も熱烈なファンがいて親しまれていますし。
支:やっぱり何かを壊そうとするのは大事だけど、音楽の大事なところを捨てたのは痛いよね。メロディー重視に回帰するのは、特にアメリカの場合、2005年以降、カントリーが流行ってからやっとだね。グラミーのコンピレーションとか聞くとはっきりメロディー回帰したのはテイラースウィフトのデヴューくらいかな。
マ:結局失われた20年になり、洋楽を聞く人も減り、アメリカの影響力がなくなり、しかも黄金の80年代を否定したので、売れるのは60年代、70年代の古い物だけという変な時代の流れを作りましたな。
支:今はメロディー重視の時代に完全に戻ってきていて、売れている曲は明らかに優れたメロディーを持っている曲だと思うけど、アメリカ人ミュージシャンもグランジとかオルタナには懲りたんじゃないかな。まあ、破壊と再生は繰り返すので、20年代くらいからまた破壊が始まるかもしれないけどね。