90年代の名盤20枚特集 その10 Baduism エリカ・バドゥ 204号
2017/06/01
好き嫌いはあってもその後のネオソウルのひな型となった名作
支配人:90年代も前半はぐちゃぐちゃだけど、後半になるとそれを素地にうまく手堅く組み合わせたものもあるよね。再構築がうまくいったというか・・・
マヌーヴァ:ありますな。例えばエリカバドゥのBaduismは90年代前半のめちゃくちゃなヒップホップの流行がなければ出てこなかったでしょうな。
支:本当に90年代前半はいったいどうしちゃったんだろうというくらい、パブリックエネミーとかNASとかヒップホップばっかりになって、ブラックミュージックファンとしては苦しかったけど、エリカバドゥの場合は、後ろの音はたしかにそのヒップホップのフォーマットだけど、歌心がすごいあるという。
マ:そうですな。四曲目Otherside of the Gameなんかを聞くとワタクシはダイアナロスに似ているかわいい声だなと思うのですが、世間ではビリー・ホリデイと比べたがったようですな。まあ、言葉の切り方とか、フレーズの歌い終わりのところとか似ているといえば似ていますな。
支:僕なんか名前の綴りが、Erikahとか日本人のパスポート名みたいで衝撃を受けたけど。頭の被り物は日本では絶対ミーシャが真似をしているんだろうと思うけど、実はエリカバドゥの場合、Nation of Gods and Earthsというイスラム教をベースにした宗教哲学に影響を受けているということだね。だから飾りでかぶっているのではなく、イスラム式なのだという・・・マルコムXなどにもつながる同じ思想のようだね。
マ:ほほう、そうだったんですか。妙に大きい被り物で気になっていたんですが。しかしデビュー作以後はあまりかぶっていなかったようにも思いますが、内容も軽い恋愛のものではないですし、深く知れば知るほど、その音作りも含めて好き嫌いが分かれますな。
支:後続するネオソウルの流れに合流していくわけだけど、この音作りもネオソウルのひな型になったし、宇多田ヒカルもなんとなくこの音作りでスタートした気がするし、全世界のラップに辟易していたR&Bファンはもろ手を挙げて感動したんじゃないかな。その後のネオソウルムーブメントがまたダンジェロの曲とか不完全で好みがわかれるんだろうけど。