ハノーヴァー・マヌーヴァー
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ノラによるノラのためのノラのノラジョーンズ

2016/11/13 20号

ジャズというラベルで釣られたのか

前回、ボサノヴァのラベルが貼られているからといってそのアルバムを聴くボサノヴァ好きはいない、と書きました[参考 傾聴のメリット]。

しかしながら、ノラ・ジョーンズの場合、まさに釣られた人が多かったのです。なにせジャズでは権威と言ってもいいブルーノートから、期待の大型新人としてしかも綺麗な女性でピアノを弾きながら歌う!となれば世のジャズファンはみんな釣られる訳です。さらにどうもあのラヴィ・シャンカールの実の娘らしい、という尾ひれもつけばこれはもう熱狂するわけです。

そうやってデビューしたノラジョーンズの1枚目"Come Away with Me"は、耳が肥えた人が聴くと、あれ、カントリーかフォークじゃないの?と思うわけですが、ラベル(この場合はレーベルというかブランドですね)に目がくらんだ方は、うん、こういうジャズもあっていいのではないか?と無理やり新しいジャズなのかと思って噛み砕こうとしていたことでしょう。


ジャズではなかったが心地良かったこの頃

しかし素直にアルバムを聞けば、少しハスキーなつぶやくような声で続く、穏やかな曲の数々はとても居心地がよく、聴いていて飽きのこない、ノラ・ジョーンズの音楽としかいいようのない音楽だったわけで、目を曇らせないでいい曲に出会うことの大切さを教えてくれる一枚でした。

作曲陣と手を切って迷走が始まった

次に続いた二枚目、"Feels like Home"はもう誰が聞いてもカントリーとフォークのフュージョンで、しかもカントリーの女王、ドリーパートンと歌っている、"Creepin' In"なんていうものがあるわけですから、彼女の背景はジャズとは言うものの、本質はカントリーなんだな、と誰でも気がついたわけです。


カントリー色がはっきり出たがまだまだ心地よかった

この辺で離れていったジャズファンも多いと思いますが、しかしまた目を曇らせなければ、ああ、ノラ・ジョーンズはいいなあ、この声でずっとつぶやいてくれないかなあ、などと思うわけです。

しかしこの後、ノラジョーンズは迷走するのです。その原因が最初の二枚の印象的な曲を作曲していたのは、Jess HarrisとLee Alexanderで、Lee Alexanderはノラの長年の恋人だったわけですが彼がノラの元を離れてしまったため、彼女は自分を表現するのに迷走し始めるのです。彼と別れた後の4枚目"The Fall"はHarrisが戻って手助けしていますが、ほとんどノラの作曲で、これまでのノラらしさはないわけです。

ノラがノラのために曲を書くとノラらしさがなくなるという奇妙な現象が起きたのです。

これが単に恋人と別れたショックからなのか、それともやはり恋人の作曲能力が優秀すぎたのか。あるいは若くして成功した多くのスターが陥るスランプなのか。

どっちもどっちだと思いますが、彼女の迷走はさらに続いて、五枚目の"Little Broken Hearts"になると、なんかもうどうでもいいアルバムのレベルになるのです。私はShe's 22というなんか90年代のオルタナティブバンドが遊びで入れた、けだるいバラードかな、みたいな曲は好きですが、売り上げもずいぶん落ちて、日本語のウィキペディアにこのアルバムの独立した解説がないところをみると、もうたぶん誰も彼女のことを気にしなくなったのでしょう。


父親は瞑想し彼女は迷走する

このアルバムはジャケットも変で、ああ、ついに彼女は壊れたなーみたいな印象を与えるのです。最初自分らしさ全開だったテイラー・スイフトとか、最初清楚だったクリスティーナ・アギレラとか、流行ると壊れる女性アーティストは多いのです。だんだんノラも病んできたなー、というジャケットと曲になってしまったのです。

2017年4月の来日が決まった

そんな彼女ですが、実は、小さいときに離婚してしまって一緒には住んでいなかった父親のラヴィ・シャンカールを訪問したり、実は結婚して二児の母親になったりしていました。

こうしてだんだんと自分が誰なのか分かってきたのでしょう、そして自分はノラジョーンズでしかないという吹っ切れた気持ちになれたのでしょうか、彼女は2016年10月に久しぶりに自分でピアノを弾くニューアルバム、"Day Breaks"を発表しました。

ジャケットもこれまでは、白人女性のように見せていましたが、自分の半分のルーツであるインド系のように見えるジャケットになりました。ノラがやっと、ノラによるノラのためのノラのノラジョーンズを見つけたのかもしれません。


父と邂逅し、自分をやっと取り戻した

彼女の来日が2017年4月に決まりました。まだ震災のキズがいえない東北の宮城からスタートするのが印象的です。自分を取り戻したのか、それともあるいは?期待が高まる彼女の来日です。

ハノーヴァー・マヌーヴァーではNorah JonesのCome Away with Meは「牧歌的な」と打っていただけると出てきます。かっこ(「」)はつけませんよ。ぜひ他の牧歌的な曲と聴き比べてください。


参考
Wikipedia Norah Jones
https://en.wikipedia.org/wiki/Norah_Jones