ハノーヴァー・マヌーヴァー
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ベース・プレイヤー列伝その1

2016/12/14 51号

ベースの進化はジャズで起こった

前々回ジャコ・パストリアスの生涯を記しましたので[参照 【誕生日】12月1日はジャコ・パストリアスの誕生日です ]、せっかくですからベースという楽器の役割を見渡しながら、ベース・プレイヤー列伝をやりたいと思います。

とはいえ、素晴らしいプレイをするベース・プレイヤーは大変な数に登りますので、革新的だった方達だけピックアップして焦点を当てていきたいと思います。

ベースプレイの革新はジャズで起きました。いわゆるアップライトベースあるいはダブルベースあるいはウッドベースというオーケストラで使うヴァイオリンのお化けのような大きい奴ですね。電気は通っていませんでした。

それを指や弓でボンボンやるわけですが、スウィングの当初はベースはただ一拍ごとボンボンやるだけで、決して日の当たる楽器ではなかったようです。

それをデューク・エリントンの楽団に1939年に入ったジミー・ブラントン(Jimmy Blanton)というベース奏者が一変させてしまったのです。彼はなんとベースでソロを取ってしまうという恐ろしい(?)ことを始め、デュークエリントン・オーケストラで人気者になってしまい、ステージでも真ん中で弾いていたそうです。もともとバイオリンの奏者だったそうで大学生になってからベースに転向したという経歴の持ち主で、ベースでもソロを取るのが当然という意識があったのかもしれません。彼は残念ながら二年間だけ活動をした後、惜しくも結核でなくなってしまいました(当時はまだ不治の病だったのでしょう)。


美しいメロディーを繰り出す

バップの鉄壁の守り手ポール・チェンバース

こうしてベースはただボンボンやるものではないという認識が広まりましたが、リズムをキープしなければならないという宿命も一方であるわけで、よりリズムを死守するかそれともメロディーを盛り込むかで個性が分かれることになりました。

バップ時代になるとこうして二人の巨匠が現れました。一人がリズム重視のポール・チェンバース(Paul Chambers)、もう一人がメロディー重視のスコット・ラファロ(Scott LaFaro)です。ポール・チェンバースはマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーン、ソニーロリンズらの巨匠の演奏を手堅くバックアップしました。

彼のリーダーアルバムである「ベース・オン・トップ」を聞いても、一曲目Yesterdaysは弓で、二曲目You'd be so nice to come home toは指でメロディーを弾いていますが、基本的に刻むような骨太のリズムに特徴のある人でしょう。

それに対しスコット・ラファロはちょっとベースの範疇を超えてピアノの低音部のような他のパートとのハーモニーを優先して考える人で、ビル・エヴァンスと美しいハーモニーを重ね合わせることに腐心していたようです。ピアノソロの後ろも単に刻むのではなく、まるでストリングスがサポートしているかのようにときにハモりながら時に離れながら厚みを出していきます。


もし事故に合わなければ・・・

スコット・ラファロは残念ながら、1961年ビルエヴァンストリオ時代に交通事故で25歳の若さでなくなりましたが、エレキベース全盛の時代まで生きていてくれたらきっとジャコ・パストリアスのような演奏をしたように思えてなりません。

どっぺんどっぺん、んぱーんぱーとスラップを広めたスタンリー・クラーク

ほかにももちろんチャールス・ミンガスやチャーリー・ヘイデンのようなベースで実験的なことをするよりコンポーザー的な先進的な人たちもいましたが、時代がエレキの時代になって奏法という点でもっとも影響力のあったのはスタンリークラークでしょう。右手親指で低音弦を叩いて、高音弦を残った中指などでひっかけてひっぱる、どっぺん、どっぺんんぱーんぱーというリズミカルでファンキーなスラップ奏法を広めました。

このスラップ奏法、クラシックでも弦を指で持ち上げて、びっとん!と指板に打ち付けるやり方はあったそうなのですが、ベースギターで本格的に始めたのは諸説ありますが、スライ・アンド・ファミリーストーンのベーシストだったラリーグラハムが元祖であると自己申告しているようです。


んぱんぱが楽しい

スラップ奏法は当時日本では「チョッパー奏法」と呼ばれていましたが、70年代のフュージョンの明るい雰囲気にぴったりのパーカッシブなどっぺん、んぱーんぱーというリズムが時代を象徴していました。

スタンリー・クラークはクラブの演奏者から突然チックコリアのリターントゥフォーエヴァーに招かれるという幸運と実力の持ち主でしたが、んぱんぱがもっとも聞けるのは彼の70年代のソロアルバムです。スラップが注目された彼ですが、ギターのようにコードを弾いたり、縦横無尽にベースを駆使して、ベースは楽しい、躍動感がある楽器だ、という印象を強烈に残しました。彼はその後、ウッドベースでの演奏を極めアルディメオラなどとアコースティックな音色も聞かせるアルバムを多数作っています。


完全にパーカッションのように遊んでいる

今日はジャズ側の列伝を見てきましたが、次回はロックの側のベースプレイヤー列伝を紹介します。