ハノーヴァー・マヌーヴァー
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ジャズピアニスト列伝その3 セロニアス・モンク 183号

2017/05/09

セロニアス・モンク-ピアノを玩具のように弾いて密集したジャズの平面を3次元の立体空間に変えた奇人

支配人:今日はマヌーヴァさんのエヴァンス評、「スキマ・クリエイター」という言葉を聴いて、ああ、スキマ・クリエイター対決ならこの人が優勝するんじゃないかな、と思う人だね。

マヌーヴァ:ほうほう、もう予想はつきますぞ。

支:まあ、すでに前回言っちゃったし、セロニアス・モンクなんだけど。スキマを作る天才はこの人だよねやっぱり。

マ:ワタクシはスキマをコントロールするエヴァンスと違って、この人は何をやってもスキマになっちゃいました、という感じの人だと思うんですな。

支:確かに玩具のピアノを弾いているみたいな、テテテテ、とかピンピンピンとか、どうも子どものいたずらみたいなフレーズが目立つから、この人はまともなソロを弾けないんじゃないか、と疑っちゃうけど。

マ:しかし、イタズラでやっているわけではないのは、'Round MidnightとかStraight, No Chaserとか、誰もがやりたがるスタンダードをいくつも作ったところから明らかなわけですが、あのピアノプレイを真似するというか、直接影響を受けたという人はいないようにも思えますな。

支:そうだね、メジャーになるまでいろいろ難解だとか誤解されていたみたいだし、イタズラみたいなソロも嫌いな人は嫌いだろうし。彼は70年代に活躍できればよかったね。ミニムーグとかをブイブイ言わせたんじゃないかな。バップ全盛時代はとにかく、全ての楽器がだーっと流れて、音がびっしり埋まっていたわけだけど、彼のとつとつとしたプレイのおかげで、3次元の空間の広がりができているよね。リズムも途切れ途切れ呼吸をしているみたいだし。のぺっとしたビバッップが立体になった。

マ:なるほど立体になったというのは言いえて妙ですな。それでお薦めは。

支:イヤー普通は自分が分身しているジャケットで有名な1956年の「ブリリアント・コーナーズ」だと思うけど、あえて、Mulligan Meets Monkをお薦めしたいね。

マ:ほほう、どうしてですかな。

支:何かモンクは他人とやれない孤高の人、みたいなイメージだけど、このジェリーマリガンと一緒にやっているのを聞くととても楽しんでいる気がするんだね。気難しいんじゃなくて遠慮と配慮の人だったんじゃないかな。気の合う人とは楽しくやれるという。そしてStraight, No Chaserとか別テイクが何曲か入っていて、完全に別の曲になっているところが、コンポーザー、アレンジャーとしてもキラリと光ってると思うんだね。ほかのバップ・プレイヤーは別テイクでもただのぺーと弾くでしょう。

マ:なるほど、気に入らないと途中でやめてしまう偏屈な人ではなく、多彩な人で、音楽を完成させることにこだわった人として捉えてみよう、ということですな。

支:そういうことだね。




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